circaのインコ日記ヽ(^。^)ノ

インコ大好き、鳥大好き人のブログ

再び獣医さんへ

今朝、いつものように小鳥たちを起こしに行って、ケージから一枚ずつ毛布をはがしておはようと声をかけている時、心臓が止まるような光景を目にしました。

 

バードベッドからほつれた糸が、桃の身体に絡まって、桃がぐったりしていたのです。初めは、桃はもう息絶えているように見えました。名前を呼んでも、桃は反応しません。でも急いでケージに手を入れてバードベッドをそっと揺らしてみたら、桃のだらんと伸びた足がバタバタと動いて、もがき始めたのです。

 

そこからは時間との闘いでした。

 

わたしはバードベッドをケージから外し、ベッドごと桃を自室へ連れて来ました。そして桃の身体を傷つけないようにそっとハサミでベッドを半分に切り、桃の羽と足に執拗に絡みついた糸を、一本一本ハサミで切っていきました。桃は暴れます。痛みと恐怖で、必死でもがきます。

 

糸を全部取り払って桃の身体をよく見ると、右足と、右羽の内側から出血していました。わたしは急いで獣医さんに電話をして状況を説明しました。電話口で看護師さんが、「すぐに連れてきてください。用意しておきますから」と言ってくれました。

 

でも今日わたしには、もうひとつ大きな問題がありました。

 

桃を獣医さんに診せるお金が、なかったのです。

 

でも、躊躇している場合じゃありませんでした。正直に看護師さんに、今日は診察代を払うお金がないことを伝えました。

 

看護師さんはためらうことなく「お金なんか後でいいから、とにかく桃ちゃんを急いで連れてきてください!」と、力強く言ってくれました。

 

桃を連れて急いでバスに乗り込み、電話から40分後には、獣医さんに着きました。

 

桃は幸いなことに、骨折はしていませんでした。出血も思った程ひどくはなく、病院に着いた時にはもう止血していました。ただ精神的なショックがひどく、桃はとても怯えていました。そして飼い主のわたしもうろたえていました。

 

桃がぐったりしている原因が、傷の痛みよりも精神的ショックによるものが大きいと分かった途端に、わたしは涙が出そうになりました。診察台に両手をついてうつむいたまま、暫く動けなくなりました。色んな意味で、自分が情けなかったのです。何故もっと早く小鳥たちを起こして、桃の異変に気づいてあげられなかったのか。何故わたしは今日、桃の診察代さえ持っていないのか。色んな思いが頭を過って、桃が助かった安堵と共に、自分が情けなくてたまらなかったのです。

 

先生は診察代については何も語らず、黙々と桃の体重に合わせて薬を調合してくれました。そして桃の傷口に薬を塗りながら、「桃ちゃんもアルビノですか。きれいな羽色ですね」と、にっこり笑ってくれました。わたしは必死で笑顔を返し、深々と頭を下げてお礼を言い、桃を連れて診察室を出ました。

 

受付でもわたしは、看護師さんに頭を下げ続けました。けれど看護師さんはケロっとした顔をして、「いいんですよ、お金なんていつでも。それより桃ちゃんが大事に至らなくて良かったですね」を繰り返すばかりです。そして桃の薬を差し出してくれます。でも請求書は、わたしが何度もお願いするまで「いいから、いいから」と言って、渡してくれませんでした。「ここには、そういう人(診察代を払えない飼い主)も沢山来ているから大丈夫よ」と、看護師さんは小声でわたしに言ってくれます。でもわたしは、来週わたしの障害者年金が支給されたら、必ず桃の診察代を持ってきますと約束をして、また頭を下げました。「本当にそのことは気にしないで。来年でもいいですからね」と笑顔で、看護師さんは最後まで冗談を言ってくれました。

 

病院を出て、杖をつきながら歩き出した時ふと振り返ると、病院の窓越しに看護師さんが、笑いながら手を振ってくれていました。わたしはもう一度深く頭を下げて、それからキャスケットを深くかぶり直し、道行く人と目を合わせないように、ゆっくりとバス停へ向かって歩き出しました。

 

涙が止まりませんでした。

 

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今月は鳥部屋の冬支度のために、普段では考えられないような出費があったのは事実です。でも、そういうことだけじゃありませんでした。色んな意味で、わたしは自分の至らなさを責めました。家に戻って、フリース毛布を敷いた水槽に桃を入れ、桃の大好きなリンゴをあげて、こたつに入れて静かに休ませました。そしてわたしも自分の鎮痛剤を飲んで、そのまま桃と一緒にこたつでパタリと寝入ってしまいました。

 

目が覚めた時には3時半を少し回っていました。桃をそっと水槽から出すと、桃はいつものようにわたしの手や肩に乗って遊んでくれました。その後、わたしはスポーツウェアに着替え、陽が暮れる前にもう一度家を出ました。

 

わたしの歩行訓練はいつも決まって、ハル子や元、ミカやカン助が眠る、小鳥たちのお墓の前からスタートします。お墓と言っても実際には、共同住宅の裏庭の片隅なのですが、そこを通りながらハル子たちに心の中で話しかけるのがわたしの癖です。

 

ハル子やカン助たちに、桃が無事であったことを報告して、今日一番反省すべき事柄を思い、小鳥たちにとってもっとマシな飼い主になる努力を、これからも続けていくことを心に刻みながら、陽が沈むまで歩き続けました。

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貧しさを、正直みじめに思う日があります。

でも、桃が今こうして生きていてくれることが、今日一番しあわせなことです。

小鳥たちの命や健康が、この町の獣医さんや看護師さんのご助力によって守られ、わたしの人生もまた、善意ある人たち、友人たちに支えられています。

感謝の気持は、言葉では表せないほどです。