野生のカラスを保護~そして別れ
いつものように運動がてら自転車に乗って二時間位走った後、帰宅しようと家に向かっていた時のこと。道端にうずくまるように、首を後ろに回して眠っているカラスを見かけました。
この野生のカラス、一週間前にもこの場所で見かけていました。
わたしがカメラを向けても飛んで逃げる訳でもなく、誰かに餌付けされて人馴れしているのかなと、その時は思った程度でした。
でもこの日は明らかに様子が変。
ここいら辺には野良猫もいるというのに、高い所じゃなくて地面の上で眠っているなんて・・おかしいなと思って近づいてみると、一応逃げるそぶりは見せるものの、歩くのもおぼつかない様子。手を伸ばすと、簡単に捕まってしまいました。
この野生のカラスを保護したのが、金曜日の夕方でした。
そのうはぺったんこであばらが浮き出ていて、野生の鳥なので一応わたしの頬を二度、嘴で突きはしたんですが、痛くもなんともない程力がありません。
カラスを抱いたまま急いで家へ戻り、キャリー代わりに一番小さな鳥かごに入れて、すぐ獣医さんに連れて行きました。
獣医さんが丁寧に全身を調べてくれましたが、これと言って悪いところは見当たりません。ただ、攻撃性が全くないのを見ると、何らかの原因で脳しんとうを起こしている可能性が高いと言われました。雛ではないけどまだ若鳥だそうで、高い所から間違って落ちて頭を打ったか、或いは固いコンクリートの壁に激突でもしたのか・・それは分からないけれど、脳しんとうの程度如何によって、このカラスの将来が決まるだろうと言われました。つまり、生きて元気を取り戻すことが出来るか、否か、です。
一週間前に撮った写真です。この時も足を滑らせながら必死で高さ2メートル位の鉄パイプの上まで逃げて、怯えた目でわたしを見降ろしていました。今思えば、大人しくて可愛い子だなんて思って、カメラを向け続けたことを後悔しています。
からぴょんと、適当だけど名前をつけました。
獣医さんから貰ってきた薬を白湯に溶かして飲ませると、からぴょんは自らすすんで白湯をゴクゴク飲んでいました。別容器に砂糖水を作って差し出すと、そっちはもっと飲んでいました。飢餓状態ではあったものの、食欲があること、自力で水分を補給出来ること。この二つが救いに思えました。連休明けの火曜日にまた、獣医さんの所へ連れて行く予定になっていました。
だけど、体長が50センチもあるカラスでも、容体が急変すると早いもんですね。
土曜日の朝、死んでしまいました。わたしの腕の中で。
最後はからぴょんを毛布にくるんで抱っこして、最後の瞬間までそっと頭を撫でながら話しかけていました。たわいもないことだし、カラスに分かる言葉じゃないんだけど、大丈夫、からぴょんにはわたしがついてるよ、一人ぼっちじゃないよ、とかなんとか。
からぴょんは発作を起こす度に必死で頭を上げて、わたしの方をじっと振り返って見るのです。その度にわたしはバアチャンがついているから大丈夫、怖くないよ、と言うのですが、それを繰り返していく内に、からぴょんの黒い綺麗な羽が、わたしの涙で濡れていってしまいました。
何度目かにからぴょんがわたしの目をじーっと見た後、からぴょんはすーっと最後の息を吐いて、そのまま逝ってしまいました。
助けられなかった、小さな命。
元気が戻ったら、また自然に返してあげようと張り切っていたけど、その夢は叶わないまま、からぴょんは天国へ旅立ってしまいました。きっと今年の春頃生まれたばかりの若鳥だったんだと思います。時々ピー、ピーと、消え入りそうな声で小さく鳴いていました。
たった24時間のお付き合いでした。
からぴょん、可愛いくりくりの目をしてた。
助けてあげられなくて、ごめんねからぴょん。